雑文

思いついたことを

母が認知症になった話【1】~親がボケると驚くほどショックを受ける

僕は50代前半、母は80才。僕は首都圏に暮らし、母は妹家族と地方で暮らしている。

それまでにも、あれ?と思ったことはあったが、「いよいよ、本格的におかしい?」と感じたのは、2年前の大晦日。僕はその前に電話で母に帰省すると伝えていたのに、妹には「アキラ(僕)は今年は来ないって。」と伝えていた。
あと、実際に母と対面して話してみると、様子がおかしい。視線が定まらず、どこか上の空。話しかけてみても、1/3くらいは返答が返答になってない。更には財布が無いと言って、押し入れの中を1時間以上、延々と探していた。

それで妹と兄が年が明けてから病院に母を連れていった。MRIを撮ったら海馬?が萎縮しており、認知症のテストを受けたところ合格点の4割くらいしか取れず、「今日は何年何月何日ですか?」という質問にまともに答えられなかったという。

医者は「あなたは認知症です」と母にはっきりと宣告した。

それに対して母は強気に「私は認知症だとは思ってないです」と(ちょっとムッとして)答えた。

こういう一連のことを僕は兄からメールで知らせてもらったんだけど、自分でも驚くほどショックを受けた。まるで親が癌の宣告をされたような感覚だった。80才の後期高齢者認知症になっただけだから、別に何も驚く理由もない、世間のどこにでもあるごく普通の出来事である。
今からずいぶん昔に知人82才のおばあさんが認知症と診断されたことがあった。その娘さんは「ものすごいショックで・・・。まさかうちの母がボケるなんて」と何回もショックという言葉を口にして混乱した様子だった。当時、僕はその気持がよく理解できなかった。この娘さんが特別に感じやすい人なんだろうくらいに思っていた。

しかし、実際に自分の親がボケて、単にモノ忘れが多くなっただけでなく、今年が何年かもわからない状況になってみて、あのときの彼女の気持ちがよくわかった。

自分を生み育て、愛情を注いでくれた親がどこか遠くの世界にいってしまう不安、そしてこれから訪れるであろう、介護の苦難が押し寄せてくる恐怖。母もかつてどこかで聞いたあちこち徘徊したり、排泄物を弄んだりするボケ老人になっていまうのだろうか?

認知症の告知から一ヶ月間、僕はパニック状態だった。