雑文

思いついたことを

死の破壊力はハンパない

この間、30年くらいのあつきあいのある友人Qに久しぶりに会った。1年ぶりくらいなんだけど、そのときは共通の友人Zの葬式のときだった。それで今回、軽く世間話をしていときにZの話になって「俺たちの友人知人で亡くなった人は30-40人くらいになるよ」と彼は言っていた。かつて我々は同じ飲み屋に通っていたので、共通の知人が多いのだ。

平均寿命が80代になったというのが信じられないほど、僕の友人知人たちは40,50代でたくさん亡くなっている。この8年くらいでは10人くらい? ガンが一番多くて、自殺や火事、コロナでも亡くなっている。

去年、ガンで亡くなったZはその3年前にガンと診断された。手術を受けなければ半年で死ぬと複数の病院から宣告されたが、当該以外の周りの臓器までもごっそり切除されてしまうのと体調は悪くないというのと、何よりも恐ろしいということで手術を受けなかった。周囲は皆、手術を強く勧めたが本人はがんとして拒否し続けた。

しかしZは意外にもその後、元気になり一時はかなり体調が良くなった。ガンと診断されてから一年経ってもピンピンしてるので僕などはそもそもガンというのは誤診だったのだと思った。それからZは旅行に行ったり、飲み屋に通ったり、バンド活動をしたり、精力的に活動を続けた。しかし、次第に物が食べられなくなり、体力が続かなくなってきた。亡くなる2週間前までステージで歌を唄っていたが、最後は寝ている時間が長くなり、寝ている間に亡くなった。

僕とZは必ずしも仲が良かったというわけではないのだが、30年以上のつきあいがあった。いわば青春を一緒に過ごした仲間だった。彼が亡くなった後の数ヶ月は心にぽっかり穴が空いたようだった。

Qも僕もZを亡くした喪失感をまだ抱えている。Z以外の亡くなった友人たちのこともはっきり覚えているし、もうこの世にいないという事実があまり現実のものに感じられない。一体、彼らはどこに行ってしまったのだろうと。

同年代の人たちが続けて亡くなると、次は自分の番かもしれないと誰しも思うようで、中にはどうやって葬式をやってもらうか真剣に考えて家族に伝えている奴もいる。

人は(あらゆる生物は)死んだらどうなるのだろう。魂は残るのだろうか。それとも電気がパチっと消えたように全てが雲散霧消するのだろうか。仮に霊的な物がこの世に残るしても、それでは数十億年後に地球が太陽に飲み込まれてなくなってしまった後、その霊的なものはどうなるのだろう? 更にその数百億年後にあらゆる星が消えてしまう自体になった後はどうなるのだろう? もしかしてこの宇宙が消滅してしまうとしたら? そして、そもそもなんで生命は生まれたのだろう? 

いつもは死のことは恐ろしくて正視できないのだが、よく知っている奴が亡くなった後はどうしてもいろいろなことを考えてしまう。彼らがいなくなったのだから、いずれ自分もこの世を去るのは当然だろうと思える。

しかし、信仰心やスピリチュアルな考えのない僕には死後のことはまったくわからない。

現在、僕は50代。余命はあとせいぜい30年くらいだろう。僕は日頃、健康の良いとされる食べ物を積極的に食べ、運動もしてなるべく元気でいたいと思っている。多少の努力をしているのだから、多少は長生きできるのではないかと期待している。そして僕はこれまで病気らしい病気をしたことがない。

しかし、いくら健康志向でいても遺伝的に一定の年齢になったら病気になるようになっていたら、どうしようもないだろう。我々できるのはせいぜい、数年の先延ばしができる程度だろう。

友人たちの死の衝撃を受けて、生きていることのありがたみをこれまで以上に感じるようになった。朝、起きて陽の光を浴び、ご飯が食べられること、それが一日一日と続くことを噛みしめるようになった。

また、これまでちょっとしたことで苛つくことが多かったのが、「近いうちに死ぬかもしれないのに、こんなつまらないことで怒ってる場合か?」と自問するようになった。

死んだら霊界はあるのかもしれないが、少なくともそれまでのようにこの世にはいられない。そう思うと身がひきしまらざるを得ない。死の破壊力はハンパないのだ。