雑文

思いついたことを

大往生は何歳からか?

先日、友人(50代半ば)の母親が亡くなった。彼女は80代の後半だった。

母親が亡くなったことを友人はYou Tubeで語っていたんだけど、精神的にショックが続いており、さすがに死亡届は出したみたいだけれども、銀行とかの諸々の死亡にともなう手続きは何もしていないと言っていた。また、ときおり泣き叫ぶことがあるという。

幾つになっても親は親であり、亡くなれば悲しいのは当然である。

しかし時代の変化を感じるのは、例えば30年くらい前だったら80代で亡くなったとなれば大往生ということで葬式はぜんぜん湿っぽくなどなかったし、お通夜はかなり明るかったと思う。

でも今は高齢化社会を反映してか、80代後半でも亡くなれば遺族も知人も涙を流し、気分がかなり落ち込む。周囲は遺族感情を若い人と同様に配慮しなければならない。「もう90近いんだから、別にいいだろ?」なんてとても言える雰囲気ではない。

この違いは何かと考えると、今回、亡くなった友人の母君は80代の後半とはいえ、かなり意識がクリアで会話が誰とでも普通にできたことが大きいと思う。昔の80才といえば、かなり老化が進んで耳が遠くなり、会話もちぐはぐな感じだった。だから、亡くなっても、「惜しい」という感じはなかった。

考えてみれば現在の日本の平均寿命は80歳を超えている。大往生というのは平均寿命よりも長く生きることが条件だろうから、今後は100才近くならないと大往生とは呼べないのかもしれない。

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上の手塚治虫の漫画を見ると、70年代くらいの60才は完全に老人である。たぶん会社の定年は50代前半だったはず。今は70代の前半くらいだったら、まだまだ体がシャキシャキ動いてばりばり働ける人も少なくない。
医療の発達や健康意識、食生活の改善などによって、この数十年で老年期の人間の肉体は驚くほど若さを保てるようになった。

個人的にはこの変化は嬉しくもあり、一方、長くなった老齢期をどう生きていけばいいのかという獏とした不安にもとらわれる。