雑文

思いついたことを

大学受験浪人時代のバイト

僕は大学に入る前に田舎の自宅で浪人を一年やった。予備校には行かなかったから、いわゆる「宅浪」である。

勉強は平均して2時間くらいしかやらなかったと思う。それ以上は集中が続かなかった。だからかなり暇な時間があった。またお金がないという現実的な理由もありアルバイトをやっていた。勤務時間は午後5時から9時くらいだったと思う。

仕事はお菓子会社で主にベルトコンベアで流れてくる箱詰めされたお菓子をダンボールにつめこむだけの簡単な仕事だった。単純で簡単な仕事だが、これを4時間ずっと続けるとなるとそれなりに疲れる。

アルバイトの同僚たちは高校生もいたし、フリーターや大学生などもいた。何回か顔を合わせていると仲良くなって話をするようになり、皆で居酒屋に飲みにいったりした。

ある日、いつもの箱詰めではなく何十キロもあるお菓子の生地の塊をナイフで適当な大きさに切り取って別の機械にいれる作業をやることになった。僕は初めてだったが、一緒に作業をやっている二十歳くらいの男はベテランだったようで、いろいろ僕に教えてくれた。

ある時、僕は手を滑らせてお菓子の生地を床に落としてしまった。「これ、どうしよう?」と男に聞くと、「いいから、いいから。そのまま機械に入れちゃえばいいんだよ」と言った。

でも床に落ちたのでそれなりに小さなゴミなどが付着している恐れはある。僕がためらっていると「少しくらいゴミが付いてても焼いちゃえば菌は死ぬからさ」と男は笑った。そう言われればそうかと思い、僕も笑って落とした生地を機械に放り込んだ。

それから男と僕は悪ノリをして、とてもここには書けないようなことをたくさんした。その間、僕たちはずっとゲラゲラ笑いながら、無造作にお菓子の生地を無造作に機械に放り込み続けた。もしも様子を録画してSNSにアップしたら確実に「バイトテロ」と呼ばれることになったはずだ。

いくら若くて世間知らずだったとはいえ、あれはやりすぎだったし、会社の管理はゆるすぎた。80年代は社会全体はそんなのんびりした時代だった。僕たちが投げ込んだ生地のお菓子を食べた人がお腹を壊さなかったことを祈るばかりである。