雑文

思いついたことを

すべては結果オーライ

先日、友人たちの新年会があった。そこには数年ぶりで会う友人知人がたくさん来ていた。その中に6年ぶりくらいで会うルミという女性とその娘さんがいた。父親のタクロウは単身赴任で北海道にいる。娘さんは中学3年生で6年前はかわいらしい小学3年生だった。皆、大きくなった子に驚いていろいろ声をかけていた。

 

思い返してみると、娘さんが生まれる前、父親となるタクロウはルミの妊娠を知ってパニックになっていた。悩みに悩んで「もう死にたい」と誰彼なく泣きついていた。

当時、ルミとタクロウの関係ははっきりとした恋愛関係というわけではなく、仲が良くて二人ともセックスが好きだから、ルミの家にタクロウが入り浸ってよく泊まり込んでいたらしい。避妊はしてない、というのは周りの友人たちも知っていて、「そのうちガキが出来て大変なことになるぞ」とタクロウはよく警告を受けていた。

でも若いということは避妊もしっかりできないということでもあり、1、2年するうちにルミは妊娠した。

独身でまだ若く定職に就いていなかったタクロウは子どもを望んでいなかったから、もしかしたら中絶をお願いしたのかもしれない。「死にたい」と言っていたくらいだから、もしもルミがそうしてくれたら胸をなでおろしたことだろう。でも、子どもが欲しいルミは迷うことなくあっさり子を産んだ。

タクロウは結婚はしなかったが、子は認知した。それから非正規であちこち働いて、何年かしてから正社員になり、タクロウとルミは正式に結婚をした。かわいい顔立ちのタクロウは女の子にモテたし、すごくルミに惚れていたというわけでもなかった。子どもが生まれなかったら、間違いなく二人は別れていたと思う。

そして今、二人は今も結婚生活を続け、妊娠を知ったときは苦悩して死にたいと叫んでいたタクロウは今、娘がかわいくてたまらない。娘の帰りが遅くなると心配してすぐにLINEを送ってうざがられている。

新年会でルミとタクロウの娘さんは知らないおじさんおばさんから声を掛けられてもニコニコして答えていた。この子は多分、どういう経緯で自分が生まれたのか詳しいことは知らないだろうな、と僕は思った。もちろん彼女は両親の過去の数々の男女関係も知らないだろう。その場にはかつてタクロウやルミとセックスをした人々もいたが、そんな話は絶対に言えない。(言えるわけがない。)

僕はルミが迷うことなく子どもを産んだと思っていたが、もしかしたら危うかったのかもしれない。何しろ、二人は若くて経済力はまったくなく結婚なんて考えられなかったのだ。

タクロウの自制心の無さで間違って生まれきた娘さんが、今ではかけがえないのない宝物になっている。娘がいない人生など考えられなくなっている。すべては結果オーライだ。皆が娘さんの成長を心から喜んだ一夜だった。